グスタフソン&ハーポヤ《Becoming》(2020)/映像からのスチル

SPECIAL EXHIBITIONS

グスタフソン&ハーポヤ「Becoming——地球に生きるための提案」

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が起きて約1年が経とうとしています。未だ出口の見えない中、私たちは「パンデミック以後の世界」という未来にも向きあわなければなりません。新型コロナウイルスのような人獣共通感染症の発生には、自然環境の破壊や地球温暖化などによる生態系の変化が関係していると考えられています。人類が地球の地質や生態系に重大な変化をもたらす「人新世」の時代に、自然や他の種とのより良い関係性、共生のあり方を考えることは急務です。国際的なアート・シーンでは近年、「人新世」における生態系とその未来について考察する作品や展覧会企画が増えつつありました。そして、いま世界中で起きているさまざまな事象について考えると、このテーマはさらに重要なものとなるはずです。では、このような状況下で、より良い未来を考察するために、人は、アートは、いったいどのようにあるべきでしょうか。

フィンランド出身の美術家のテリケ・ハーポヤと著述家であり脚本家、劇作家でもあるラウラ・グスタフソンによる学際的ユニット「グスタフソン&ハーポヤ」は、人間を中心とする世界観から生じる問題に焦点を当て、より包括的な社会概念への道を開くことを目指して、大規模で長期的なプロジェクトに取り組んでいます。日本で初の個展となる本展「Becoming——地球に生きるための提案」の中心となる映像作品《Becoming》(2020)で、グスタフソン&ハーポヤは、人間であるために不可欠なものとは何かを問いかけています。海の見える穏やかな場所や緑豊かで静かな森、街の中、あるいは室内などのさまざまな場所で、活動家や思想家、アーティスト、介護者、子どもたちなどの37名の回答者は、人間の暮らしにとって有意義なあり方をめぐる数々の問いの中から、いま芽ぐみつつあり、かつ育くむべき現象について、それぞれの考えを語ります。《Becoming》と、この作品をもとに編纂された『つぼみの本——地球に生きるための手引き』はともに、鑑賞者自身がこれらの問いについて考えるための道標となることでしょう。

以前のようには自由に行き来ができないときがまだまだ続くとしても、遠く離れた場所にいる人と人とをつなぎ、ともに同じ問題について考える方法を、もう私たちはいくつも知っています。これもまた、私たちが育てていくべき「つぼみ」の一つなのかもしれません。世界が危機に直面している現在、いかに生きるべきか、どのような存在になるべきかという、地球に生きるすべての人に向けられた問いについて、私たちにどのような応答ができるのか。落ち着いて考える時間を持つための場が、ここにはあります。

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作家
グスタフソン&ハーポヤ
会場
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
展示室
@KCUA 1, 2
会期
2021年1月30日(土)2021年3月21日(日)
企画
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
主催
京都市立芸術大学
助成
芸術文化振興基金助成事業
公益財団法人野村財団
公益財団法人吉野石膏美術振興財団
後援
フィンランド大使館
お問い
合わせ

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
Tel: 075-253-1509
メールでのお問い合わせは、
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Artist Profiles

作家プロフィール

グスタフソン&ハーポヤ(Gustafsson&Haapoja)
ニューヨークを拠点とするビジュアルアーティストのテリケ・ハーポヤと、フィンランドを拠点とする著述家であり脚本家、劇作家でもあるラウラ・グスタフソンによる学際的ユニット。2012年に開始した二人のコラボレーションは、人間以外の種の観点から歴史と社会を探求するプロジェクトから始まり、人間と動物の概念を解体し、それらが人種化や性差別、社会的排除のメカニズムといかに関連しているかという試みへと展開してきた。グスタフソン&ハーポヤの全作品に通底するのは、ユートピアの思想や別の世界の可能性といったテーマである。詩的なアプローチと記録資料を融合させ、インスタレーションや映像、パフォーマンスなどの表現手法を組みあわせた作品を手がける。それらの作品からは二人が演劇のバックグラウンドをもっていることがうかがえる。また、コラボレーションにおいて強調されるのは、エッセイやディスカッション、アクティビズムを通して、プロジェクトと身の回りの現実を結びつけることの重要性である。過去のインスタレーション作品に《The Museum of the History of Cattle》(2013)、《Museum of Nonhumanity》(Finnish State Prize for Media Art受賞、2016)がある。主な作品にサウンド・インスタレーション《Waiting Room》(オランダで初公開、2019)、法廷を舞台にしたレクチャー・パフォーマンス《The Trial》(Baltic Circle国際演劇祭、2014)がある。

www.gustafssonhaapoja.org
ラウラ・グスタフソン(Laura Gustafsson)
1983年生まれ。ヘルシンキを拠点とする著述家、脚本家、劇作家。文学作品の他に、戯曲やラジオドラマ、テレビドラマを執筆する。主な著作に『Huorasatu』(英題「Whorestory」、2011)、『Anomalia』(英題「Anomaly」、2013)、『Korpisoturi』(英題「Wilderness Warrior」、2016)、『Pohja』(英題「Ground」、2017)がある。
テリケ・ハーポヤ(Terike Haapoja)
1974年生まれ。ニューヨークを拠点とするビジュアルアーティスト。展覧会で作品を発表する他、作家や大学講師としても活躍。主な作品に《Closed Circuit – Open Duration and The Party of Others》(「ヴェネチア・ビエンナーレ」ノルディック・パビリオン、2013)がある。

Installation Views

会場写真

グスタフソン&ハーポヤ「Becoming──地球に生きるための提案」展示風景/撮影:来田猛

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