KCUA OPEN CALL EXHIBITIONS
2024年度申請展
むらたちひろ「記憶の巡り」
京都市立芸術大学の新キャンパスの移転整備工事前の数年間、元崇仁小学校の校舎で、数々の本学学生・卒業生が制作・展示を行ってきました。本学染織専攻の修了生のむらたちひろも、その一人です。元崇仁小学校の校舎は工事前に解体され、現在は保存された記念樹のイチョウと体育館、高瀬川のビオトープを除き、その跡地に新しい建物が建っています。
本展では、当時むらたが元崇仁小学校の校舎で記録した写真や映像を用いて制作した作品群を展示します。一つは、生地の裏面に捺染(プリント)した写真の像を、部分的に水で浸透させて表面ににじませることで図像が表れてくる《thickness of time》のシリーズです。乾いた状態で表側から水を滲ませることで少しずつ柔らかなイメージが立ち上がってくるさまは、断片的な記憶を紐解くうちにいくつかの物事がつながって鮮やかさが蘇るときの、頭のなかのイメージの動きのようでもあります。その様子は制作時にしか見ることはできませんが、そうした記憶を辿るかのような現象の痕跡もまた、鑑賞者の感覚に何かを語りかけることでしょう。もう一つのシリーズ、《planet》は、白い布を折ってできた舟が染料で少しずつ染まっていく様子を撮影したものです。映像と、舟であった白い布のいずれにも、閉校した小学校の活動の歴史が刻み込まれた静かな空間に流れる時間が緩やかに描かれています。
またむらたは、これらの作品を制作しながら、豊かな自然に恵まれた元崇仁小学校のことを思い起こしていました。ひと気のない小学校に生い茂る木々と、それらの間からさす木漏れ日とが織りなす光景は、非常に美しいものでした。在りし日の記憶のなかにのみ残る緑と光のイメージを、むらたは4枚組の染色作品《That green, that wind.》に表し、展示空間に浮かべました。
布に淡い色の染料を滲ませ、染まっていく時間を刻むむらたの作品を、記憶のなかにある輪郭のおぼろげなイメージになぞらえてみると、作品の題材となった特定の空間と時間から浮かび上がり、鑑賞者それぞれがもつ何かの記憶にも重なり合うかもしれません。目で見ている作品のイメージと、頭のなかのイメージが溶け合うことは、むらたが染色によって表現するものの、もう一つの体験のかたちとなることでしょう。
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- 作家
- むらたちひろ
- 会場
- 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
- 会期
- 2024年6月29日(土)–2024年8月4日(日)
- 主催
- 京都市立芸術大学(2024年度京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA申請展)
- 企画
- むらたちひろ
- お問い
合わせ -
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
Tel: 075-585-2010
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作家プロフィール
作家プロフィール
- むらたちひろ
- 1986年京都生まれ。2011年京都市立芸術大学大学院美術研究科(染織)修了。「染まる現象 / 染める行為」に内包される様々な「揺らぎ」に身近な世界をうつし見る。おもな展覧会に、「染・清流館コレクション展 染色の抽象表現」(2024, 染・清流館 / 京都)、「京都府新鋭選抜展」(2023, 京都文化博物館)、 「VOCA展2022」(2022, 上野の森美術館 / 東京)、「TOKAS Emerging 2022」(2022, TOKAS本郷 / 東京)、個展「beyond」(2022, Gallery PARC / 京都)など。現在、京都・大阪を拠点に活動。
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