KCUA OPEN CALL EXHIBITIONS

2024年度申請展

ダイヤモンドから夢を放つペルセウス

本展覧会は、美術史家・岡田温司著『半透明の美学』をきっかけとして、現代(とくにコロナ禍を経た今)における絵画の意味を再考しようと構想されたものです。絵画という画像の形式は「媒介性」にこそ本質があるのだとしたら、「鏡」、「痕跡」、「灰色」、「2次元と3次元」、「実在と存在」のあいだ、そして「天使」──さまざまなテーマが「半透明」というキーワードによって貫かれていると言えます。ひいては、視覚というもの自体の「媒介性」が、絵画という「半透明」なイメージのありかたと深く関係しているのかもしれません。

スマートフォンやパソコンの画面を介して遠く離れた人や場所のことを見るように、普段は意識していなくても、私たちは必ず何かを通して見ています。ものを “直接” 見ているということはありません。それは(あるいは比喩として)「窓」や「眼鏡」などを通して見るといったことだけではなく、そもそも私たち自身の「目」を介して見ているからです。ならば、「見る」ということについて改めて考えることは、私たち自身について考えることに他なりません。

絵画を見るとき、問題になるのは私たちの視点です。すなわち、知識や経験など「見かた」に影響を及ぼしているもの──たとえば、自分が生まれ育った時代や地域について顧みることにもなるでしょう。本展のタイトルは、島谷ひとみの楽曲『Perseus-ペルセウス-』から引用しました。平成という時代を象徴するような歌詞であると同時に、まなざしの対象を石化させてしまうというメドゥーサを退治したペルセウスが、視覚という幻想の媒体として称揚する「半透明」なそれは、絵画そのものを象徴しているのかもしれません。

 

(テキスト:飯盛希/美術批評家)

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作家
阪本結下村悠天橘葉月西原彩香峰松沙矢
会場
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
会期
2025年1月11日(土)2025年2月11日(火)
開館時間
10:00 am6:00 am
休館日
1月14日(火)、20日(月)、24日(金)-27日(月)、2月3日(月)
入場料
無料
主催
京都市立芸術大学(2024年度京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA申請展)
企画
「半透明の美学」と現代の絵画(仮)展実行委員会
助成
京都市「Arts Aid KYOTO」
協力
京都市立芸術大学美術学部同窓会象の会
お問い
合わせ

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
Tel: 075-585-2010
メールでのお問い合わせは、
お問い合わせフォームからお送りください。

Artist Profiles

作家プロフィール

阪本結(さかもと・ゆい)
自身の環境にあるものの観察から自身の輪郭を探ることができないかと思い絵を描いています。
京都での生活のなかで自分がいつも通る場所で見かけたものの写真を組み合わせて絵画にしています。

1988年 京都府生まれ
2011年 京都市立芸術大学 美術学部 美術科 油画専攻 卒業
2018年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科 絵画専攻(油画)修了

主な展示
2024年 個展「ほそい骨、うすい皮ふ」(GAMOYON GALLERY/大阪)
2023年 個展「国道沿いのスピード アパートの湿度など」(GAMOYON GALLERY/大阪)
2023年 個展「雑草と営巣」(長亭ギャラリー/東京)
2021年 個展(極小美術館/岐阜)
2021年 個展「地元のサンプリング」(長亭ギャラリー/東京)
下村悠天(しもむら・ゆたか)
イメージを物質化し再構成することで、イメージそのものとの関係を見つめ直す。

1999年 滋賀県生まれ
2022年 京都市立芸術大学 美術学部 美術科 油画専攻 卒業
2024年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科 美術専攻(油画)修了

主な展示
2024年 「架空と現実を行き来するSNS時代のアート達」(ASTER Curator Museum/金沢)
2023年 個展「#」(SUNABA/大阪)
2023年 個展「# \ Re-touch」(KUNST ARZT/京都)
橘 葉⽉(たちばな・はづき)
視点の再現と想像を絵画で試みている。実寸大に描き、置いた時、見る人はどれほど実感を得るのか。実寸とはどこにあるのか。展示空間の鏡像をモチーフにしたり、自画像の構造を用いたりすることで、主観から成り立つ描くという視点を、どれほど客観と接続できるのかを制作を通して考えている。

2000年 ⼤阪府生まれ
2023年 京都市⽴芸術⼤学 美術学部 美術科 油画専攻 卒業
現在  京都市⽴芸術⼤学⼤学院 美術研究科 美術専攻(油画)在籍中

主な展示
2024年 伊藤真生・橘葉月「バケツを持っている時間」(HAPS HOUSE/京都)
2023年 個展「熱視線」(芝⽥町画廊/⼤阪)
2021年 個展「鏡が⾒てるから、ここにいる。」(Alternative space yuge/京都)
2021年 個展「鏡が⾒てるなら そこにいる」(京都市⽴芸術⼤学⼩ギャラリー/京都)
西原彩香(にしはら・あやか)
絵画と画像のあいだにあるイメージの「軽さ」をテーマに制作しています。
コロナ禍のあいだ、閉じこもっていた部屋で磨りガラスの窓を通して外の光景を眺めていたことを、スマートフォンの画面を通して世界中の画像や映像を見ていることに準えて、透明な「窓」越しに「透過光」の景色を見ている身体をモチーフにしています。

1992年 愛知県生まれ
2017年 名古屋芸術大学 芸術学部 芸術学科 美術領域 洋画コース 卒業
2019年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科 絵画専攻(油画)修了

主な展示
2024年 「逃げ水をすくう」(The Terminal KYOTO/京都)
2023年 個展「白河夜船」(うららか絵画祭・HAGISO/東京)
2021年 個展「存在の耐えられない軽さ」(kumagusuku SAS/京都)
2021年 個展「窓、半透明、身体がとまったとき。」(artists space TERRAIN/京都)
峰松沙矢(みねまつ・さや)
この身体や、この手で描いたイメージは何によって保たれているのか
自己のやどる身体が—今ここにあるもの—として認識することは、わたしを纏う衣や外気の温度、生物が持つ体温、風景といった、いずれも他者の接触を感知することでようやく保たれる微細なイメージからなるものです。支持体との接触から生成されるイメージと、描くことができない温度や重さといった実在の関係から、頼りないイメージがかたちを保つ/崩れるような揺らぎを制作しています。

2000年 ⼤阪府生まれ
2023年 京都市⽴芸術⼤学 美術学部 美術科 油画専攻 卒業
現在  京都市⽴芸術⼤学⼤学院 美術研究科 美術専攻(油画)在籍中

主な展示
2024年 個展「spoofing」(Alternative Space yuge)
2024年 個展「spotting」(京都 蔦屋書店 6F ギャラリーウォール)
2024年 「スローイング・スパゲッティ at HAPS HOUSE」(HAPS HOUSE/京都)
2023年 「東九条芸術祭」(京都市地域・多文化交流ネットワークセンター、他/京都)
2022年 個展「はな あな たもたれるはな」(MEDIASHOP|gallery2/京都)