KCUA OPEN CALL EXHIBITIONS
2025年度申請展
包摂とQ
「多様性(diversity)」という言葉は、いまや現代社会のなかで独り歩きし始め、正しさの象徴のように語られることがあります。しかしその言葉が実際に意味するものは、果たしてどこまで届いているのでしょうか。そして、誰が語り、誰が受け入れ、そして誰が取りこぼされているのでしょうか。
「包摂とQ」展は、水木塁とアーティスト・コレクティブ「山水東京」の共同企画による展覧会です。本展では、俯瞰的・制度的な「多様性」ではなく、他者や他種との関係を自らの問題として引き受ける「包摂」の姿勢に注目します。
出品作家である小宮りさ麻吏奈&鈴木千尋、中村太一、長谷川由貴、水木塁の作品は、それぞれQで始まる性質—— 【Queer(クィア)/ Quagmire(沼地、入り組んだ状況)/ Quiver(震える、揺らめく)/ Quietude(内的な静けさ)—— 】を含んでいます。これらのQを鍵語として見返すと、「包摂」は私たちの生活の中で生じる摩擦や交錯、すれ違いを含んだプロセスとして捉え直すことができます。それは、共生の理想ではなく、現実の複雑さに根ざした応答の扉を開くのではないでしょうか。
文化人類学や都市論、クィア理論などを横断しながら、本展は都市という錯綜した場における「包摂」の可能性を観客とともに問い直します。
(テキスト:水木 塁)
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- 作家
- 山水東京中村太一長谷川由貴繁殖する庭プロジェクト (小宮りさ麻吏奈+鈴木千尋)水木塁
- 会場
- 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
- 会期
-
2025年8月17日(日)–2025年9月15日(月)
- 開館時間
- 10:00 am–6:00 pm
- 休館日
- 月曜日
9月15日(月・祝)は開館
- 入場料
- 無料
- 主催
- 京都市立芸術大学(2025年度京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA申請展)
- 企画
- 水木塁+山水東京
- お問い
合わせ -
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
Tel: 075-585-2010
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Artist Profiles
作家プロフィール
作家プロフィール
- 中村太一 (なかむら・たいち)
- 1982年神奈川県生まれ。東京造形大学美術学部絵画専攻領域修了。キャンバスに油彩、あるいは紙に水彩で描く具象作品、雑誌の切り抜きの上にアクリル絵具などで自由にストロークを加えたミクストメディアの作品など様々な制作を行なう。いずれの作品でもシンボルやメタファーが用いられ、一貫して、自然の摂理を逸脱することで進歩してきた人間に対する複雑な思いをメッセージに込めている。近年の展覧会に、グループ展「SPRING SHOW - Drawings -」(WAITINGROOM、東京、2025年)、個展「WHERE ARE WE?」(YIRI ARTS、台北、2024年)、『ROADS NOT ON THE MAP』(CAVE-AYUMI GALLERY、東京、2024年)、グループ展「Lost in Paintings」(Heimlichkeit Nikai、東京、2024年)、グループ展 「New Origins - Level Unlocked」(Andrea Festa Fine Art、ローマ、2023年)など。
- 長谷川由貴 (はせがわ・ゆき)
- 1989年生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画修了。日常生活の中で当然のものとして見過ごされてきた「植物」をモチーフに、人間中心的な価値観やものの見方をずらし、有用性/実用性といった物差しで他の生き物を測ることから逃れ、今日の人間そのものの在り方を問う絵画を制作している。近年の展覧会に、グループ展「リテラル コリジョンズ/文字通りの衝突」(半兵衛麩ギャラリーkeiryu、京都、2025年)、長谷川由貴 米村優人「自生するキメラ」(BnA Alter Museum、京都、2025年)、「Art Rhizome Kyoto『逆旅京都』」(Cafe DOnG by Sfera、京都、2024年)、天牛美矢子 長谷川由貴 二人展「Pure Land」(Bohemian's Guild CAGE、東京、2023年)など。
- 繁殖する庭プロジェクト [小宮りさ麻吏奈(こみや・りさ・まりな)+鈴木千尋(すずき・ちひろ)]
- 小宮りさ麻吏奈と鈴木千尋からなるユニット。既存の制度によって周縁化された存在や事象をすくい取り、異性愛規範の外側を模索するためプロジェクトを展開している。「繁殖する庭」という「場」の運営を行うほか、実際の場所にとどまらず、従来の家族制度から排除されてきたクィアネスを抱えた存在がどのような「場」を構築できるかを模索するためのプラットフォーム。近年の展覧会に個展「繁殖する庭」(GALLERY TOH、東京、2021年)、上映に「東京ドキュメンタリー映画祭2024」(新宿ケイズシネマ、東京、2024年)、「FLATLINE CITY 水平都市 2024」(王城ビル、東京、2024年)など。
- 水木 塁 (みずき・るい)
- 1983 年生まれ。京都市立芸術大学美術学部工芸科漆工専攻卒業、同大学美術研究科メディア・アート領域博士号取得。都市と「わたしたち」の間にある環境的、文化的、政治的な関係をモチーフに多様なメディアを用いて作品を展開。東アジア特有の思想である山水をテーマに、現代の芸術と社会について考えるコレクティブ「山水東京」のメンバーとしても活動。近年の展覧会に個展「凪に、傾く陽と。」(CAVE AYUMI GALLERY、東京、2025年)、「UrbanNesting:再び都市に棲む」(BankART Life7、神奈川、2024年)、「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」(東京都写真美術館、東京、2022年)、「ON―ものと身体、接点から」(清須市はるひ美術館、愛知、2022年)など。2024年文化庁新進芸術家海外研修制度にてロンドンに滞在。
- 山水東京(さんすいとうきょう)
- 東アジアの在来思想「山水」を着想源に、現代の芸術と社会を繋ぐアートプロジェクトや展覧会を企画制作するアーティスト・コレクティブ。
主な展覧会に「アーバン山水」(kudan house、東京、2023年)、「それぞれの山水」(駒込倉庫、東京、2020年)。
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