20220117_ではない
2022年1月17日、わたしは『おそらくこれは展示ではない(としたら、何だ?)』の解体を文字通り試みるために「ではない」という言葉を眺め考えながら、そういえば5, 6年前によく「AでもなくBでもない/neither A nor B」という二連否定(?)によって書かれた文体が流行った(少なくとも自分の周囲に流れ込んでくる文章の中には多く見られた)なぁ、なんてことを思い出していた。苦肉の策感が漂いつつも、「Cだ」とも断言できない、言い得ない何か、どう提示してよいのかわからない意味的領域を指向し思考するため、2つの言葉で挟み撃ちにしながら、じわじわとある一定の言語的なエリアに追い込みながら、接近し、なんとかして捉えようとする態度に共感するところがあった。
それでは、「(A)ではない」という単否定はどうだろう?単純に言うとNot A、つまりAではない(全て)=A以外(の何か、あるいは、のどれか)ということになる(だろうか?)。ちなみにこの場合Not Aの応募対象は〈世界マイナスA〉くらいあるので、「A以外」の候補可能性はあまりに膨大で想像のしようが無い、ようにも思える。だがここで重要なのはAがある程度実はNot Aを特徴づけているという点だ。Not Aは何でもいいわけじゃない。そう、Not AにとってはAは欠かせない一部なんだ。不可能=Not 可能という単語がimpossibleで、im+possibleで、不・可能なのを考えてもわかる通り。Not AはAと密接に関わりがある、あるいは案外灯台下暗し的な隣接地帯にNot Aは見つかることも多いのではないか??
2022年2月4日にわたしは2021年10月21日に書いた以下の文章を思い出していた。
【ある言葉が発せられ/記されると、それ以外ーというニゲイトされた空間や存在が同時に立ち上がる アーカイヴされる何かは必ずアーカイヴされない何かを(も)立ち上げるんだ
その境界はどこかにある、少なくともこの段落の上の段落を入力した、俺の、あの瞬間には存在したかあるいはその瞬間にその境界が作られたはすだ、無いものを記すことは出来ないからだ、にも関わらず、漸近することと超越すること以外に境界にアプローチすることはできない、(境界)点とか線というのは概念であって物理的な定量を持つ領域とは違うんだから、まさにそれこそが永遠に境界の遠さを決定づけているんだろう。だからあちらとこちらのような二分された世界は確定され得ない、つまり無い、つまり世界はやはり一つである、いや複数的にひとつの世界を成す?んだから、と言った時にニゲイトされた空間はどこで何を申すのか?と言えば逆相としての前言は強化されるだろうか?
あるいは…】
ここでわたしが漸近しようと試みた境界はまさにどこにNotがあるのか?という問いではないか?Aをアーカイブされる何かとし、Not AでもってNotを挟み撃ちしてみたらどうなるだろうか?
Neither A nor Not A =アーカイヴされる何かでもなくアーカイヴされない何かでもない。
このアクロバティックな文章を記すと同時に、わたしは2021年12月11日にその一つの可能性が着地しうる現実が存在すること、それはやはりアーカイヴのすぐ隣に転がっていたことを知ったときの事を思い出した。phase(0以前から)0(から1へ)でもあった『第十門第四類』でにわかにフォーカスがあてられた収蔵品の「割愛」たちは、まさにNeither 収蔵される品 nor Not 収蔵される品であったのだ。さらに、同じく忘れられていた引き出しの奥から引っ張り出されることで、この3重否定形によって挟み込まれた不可能に思える意味的ニッチはそれ以上の何かを体現していた。おそらくあの割愛たちはアーカイヴではない(としたら、何だ?)。