「バシェの音響彫刻」とは、ベルナール・バシェ(1917–2015)、フランソワ・バシェ(1920–2014)の兄弟によって考案された音の鳴るオブジェです。ニューヨーク近代美術館（MoMA）、パリ装飾芸術美術館など世界各地で活発に展覧会や演奏会が開催されました。

1970年の大阪万博において、鉄鋼館のディレクターであった作曲家・武満徹から音響彫刻の製作を依頼されたフランソワ・バシェは、来日して17基の音響彫刻をつくりました。1基1基すべて形状が異なる作品は、響かせるサウンドもさまざまで、誰もが音を出して楽しむことができるものです。しかし万博閉幕後、音響彫刻はすべて解体され、倉庫に保管されたまま世の中から忘れられていきました。約40年後の2010年、旧鉄鋼館が「EXPO’70パビリオン」として再開するのを機に、音響彫刻を修復・復元する計画が進み始めました。現在までに6基が修復され、音の出せる状態で保管されています。

本展では2013年に修復・復元された《高木フォーン》《川上フォーン》、2015年に京都市立芸術大学で修復・復元された《桂フォーン》《渡辺フォーン》、2017年に東京藝術大学で修復・復元された《勝原フォーン》が集います。また、子ども用の教育音具として開発されたパレット・ソノールや、バシェの原理を用いた小型の音響彫刻も合わせて展示します。

さらに、修復に至るまでのアーカイブの公開や、週末のコンサートやパフォーマンス公演、ワークショップなど、多彩なイベントを展開することで、個性的で鮮烈なアコースティック音を放つ構造を持ったバシェ音響彫刻の魅力をさまざまな角度から紹介し、その秘密と潜在性に迫ります。

関連イベント
11月7日｜オープニングコンサート
出演：渡辺亮（パーカッショニスト）＋袋坂ヤスオ（舞踏家）、アンサンブル・ソノーラ（岡田加津子（作曲家）、北村千絵（ボーカリスト）、沢田穣治（作曲家・ベーシスト）、渡辺亮）

11月8日｜ギャラリートーク「バシェ音響彫刻 よみがえる響き、ゆらめく身体」
出演：岡田加津子（京都市立芸術大学音楽学部教授）、川崎義博（京都市立芸術大学芸術資源研究センター特別研究員）、三枝一将（東京藝術大学美術学部非常勤講師／藝大ファクトリーラボ ディレクター）

11月8日｜ミニコンサート
出演：アンサンブル・ソノーラ

11月14日｜若手作曲家によるコンサート
出演：田中詩也、土方渚紗、下村景（京都市立芸術大学作曲指揮専攻）、小宮知久（作曲家／東京藝術大学芸術情報センター）

11月15日｜アーティスト・パフォーマンス
出演①：黒川岳（アーティスト）
出演②：鈴木昭男（サウンド・アーティスト）、宮北裕美（ダンサー・アーティスト）

11月20日｜ゲストコンサート
企画：沢田穣治
出演：アンサンブル・ソノーラ、おおたか静流、yoshitakeEXPE

11月22日｜国際シンポジウム 「子どもは身体で音を聴いている——各国における活動報告」
出演：ピエール・キュフィニ（フランスバシェ協会会長、ベルナール・バシェ 元アシスタント）、フレデリック・フラデ（フランスバシェ協会理事長）、マルティ・ルイツ（サウンド・アーティスト、バシェ研究者）、ヴァンサン・ブシャール・ヴァロンタン（ケベック大学モントリオール校 音楽学部教授）、川崎義博、三枝一将、岡田加津子
通訳：北村千絵、土山亮子

11月23日｜コンサート「よみがえる響き、ゆらめく身体」
出演①：岡田加津子、岩田小桃、高井梨緒（コントラバス）
出演②：角正之（ダンサー）、川崎義博（サウンド・アーティスト）
出演③：アンサンブル・ソノーラ、桑鶴麻氣子（朗読）、升田学（ダンサー）

12月12日｜オンライン無料Live配信特別コンサート
出演：アンサンブル・ソノーラ
演出・配信：N.U.I.project

12月13日｜コンサート「開花した音響彫刻——奏でる美術家と描く音楽家」
出演：アンサンブル・ソノーラ（沢田穣治、渡辺亮、岡田加津子）、山口和也（美術家）

12月19日｜みんなのためのサウンド・ワークショップ
講師：岡田加津子、川崎義博