KCUA OPEN CALL EXHIBITIONS

LICHT

Breath of Light

LICHT: der Wille zur Einsamkeit

芸術家にとって、彼が信頼を置くことができるひとつの約束があるとすれば、それは、孤独の意志である。

(リルケ『フィレンツェだより』森有正訳、筑摩書房、1970年)

科学の教えるところでは地球上に現存する多種多様な生命は共通の祖先から分岐し、進化してきた。そのような見方からすれば、「生命」そのものは生き続けていることになる。有性生殖と寿命は同時に発生した。光の明滅のように莫大な数の個体が誕生し、成長し、生殖し、老衰し、死んでいくが、それは単に生命が次世代へと効率よく受け継がれるためのプロセスであるという見方もある。たとえそうであるとしても、個体は何かを感じながら生きる。ひとつの個体が死ぬ時、失われるのはその個体の記憶が浸透した感性世界である。

五感が健康である際に思い描かれる生死の間は、それらが壊れていく際に捉えられる生死の間とはおそらく異なる。晩年のアーティストの作品では何かが崩れている。諸感覚がほどけて自走するのだろうか。崩れることは必ずしも悪いことでははない。諸感覚と記憶の配置が緩やかに変化していく老化という現象。それを肯定的に捉える感性学が必要とされる。

岩城覚久(近畿大学文芸学部准教授)


砥綿正之+ 松本泰章は1991年の《DIVINA COMMEDIA—死のプラクシス—》以来、《trobar clus》(1992-93)、《Gravity and Grace》(1995)、《Trangression》(1997)、《Angel of History》(1999)、《IRIS》(2008)、《sky / sea》(2013)、《Forbidden Colours》(2015)といった作品を発表してきました。本作品《LICHT》は、60歳を目前にした砥綿と松本が2018年の終りごろに二人で話し合ったアイデアを手がかりとして制作されました(翌年11月4日に砥綿は他界しました)。本作品展示に引用されている『フィレンツェだより』の一節は1898年5月に22歳のリルケが記したものであり、1978年に10代で出会った砥綿と松本が88年ごろから開始する二人の共同制作の指針として共有していたものです。

原案:砥綿正之、松本泰章

制作:松本泰章
プログラミング:人長果月
サウンド:吹田哲二郎
タイポグラフィー:Nicole Schmid
モデル:須藤絢乃

協力:helmut schmid design、岩城覚久(テキスト)、William HALL(翻訳)、池田精堂(インストール)、西山明雄(CG シミュレーション)

撮影協力:一般社団法人IKUHART企画、認定NPO法人アメニティ2000協会、Dongree、中井浩史、川野昌通


Closing Performance:12月11日(日)17:00–18:00

齋藤悠麻
1997年福井県出身、京都市在住。2017年からモジュラーシンセサイザーやサンプラーなど、ハードウェアを使用した即興演奏を主に活動。近年はソフトウェアを使用した楽曲制作を行う。楽器たちの「プリセット」が持つ詩性に焦点を当てた上で、観念的なアプローチから音場を構築し「アンビエント・ミュージック」の再定義を試みている。本公演では本展に参照に制作した組曲を演奏する。

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作家
砥綿正之松本泰章
会場
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
展示室
@KCUA 1
会期
2022年11月19日(土)2022年12月11日(日)
主催
京都市立芸術大学
助成
JSPS 科研費 20H01223
お問い
合わせ

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
Tel: 075-585-2010
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