絵画とは見る人の内で浮くものですが、本来あるべき姿での鑑賞が達成されることは少ないように見受けられます。反って、支持体を甘受または愛好し、壁に依りかかることを善しとする姿勢までもが常態化しています。イリュージョンを共有する装置としては未だ演劇を追い抜けませんが、「描く＋絵具」という身体と物質を視覚上で統合し、イメージを浮かしめる絵画の本質的有様が実現されないのは不本意の極みです。

かつて、非物質化されたものが最も大切であると説いた者がいましたが、極めて的確な先行した絵画論であったと言えます。 「Lʼessentiel est invisible pour les yeux. 本当に大切なものは目に見えない*」本展覧会では、非物質のレイヤーが絵画を支えていることを指摘する関口、浮いた状態で完成することを見越した作品を作り続ける和田の2作家に着目し、美術における宇宙時代の遅すぎた到来を寿ぎ、未来へ向けた議論の場を生成します。

* ”Le Petit Prance” Antoine de Saint-Exupéry, folio 15 mars 2007

（テキスト：和田真由子）

企画支援｜逃げ切ったと思うなよ委員会

「逃げ切ったと思うなよ委員会」は、関口正浩作品のアーカイブのための有志グループです。2024年度は公益財団法人小笠原敏晶記念財団の助成を受けて活動しています。
メンバー：
石井海音、佐々木ひろこ、中田有美、松田啓祐、村瀬裕子、和田真由子