SPECIAL EXHIBITIONS

Slow Culture #kogei

日本の工芸は、長い歴史の中で培われてきた素材の力を最大限に引き出す伝統的な技法と、洗練された手仕事の美しさで人々を魅了してきました。素朴で美しく機能的な日用品を生み出す工芸や、高度な技術で美の粋を極める美術工芸、実用性にとどまらない独自の表現メディアとしての工芸など、多様なあり方で展開しながら作り手の美意識やその時代の新しい思考を反映し続けています。作品の使用や鑑賞の段階においても、思いがけない手法で情景を演出する「見立て」の文化や、モノと人と場の相互作用から生まれる新たな創造性が見られ、これらは日本の工芸に独自性をもたらす重要な要因であると考えられています。

本展「Slow Culture #kogei」では漆・陶磁・染織・ガラス・金工などの工芸あるいは工芸的要素を取り入れる16名(組)の作家を取り上げ、現代の思考や感覚、新しい素材や技術、そして伝統を融合させた表現を紹介するとともに、自然環境や社会の問題に他ジャンルの専門家と連携して向き合う今日的な工芸観にも注目します。展示空間はデジタルの概念を引用して独自の彫刻観を探求する美術家の熊谷卓哉との協働により設計。会場に流れるサウンドを、美術と音楽をまたいで多才に活動する小松千倫が演出します。デジタルテクノロジーの加速度的な進化により、リアルとバーチャルが融け合う社会の状況を着想源とした「現代を表象する場」を設え、モノと場の調和や対比を生み出す実験的な空間に作品を展示します。

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作家
熊谷卓哉石塚源太隗楠𡧃野湧織田隼生菊池虎十木田陽子國政サトシ小松千倫西條茜佐々木萌水佐々木怜央鈴木祥太つのだゆきデヴィッド・ビランダー土岐謙次西久松友花彦十蒔絵
会場
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
展示室
@KCUA 1, 2
開催日数
56日間
(2023年4月22日(土)2023年6月25日(日))
入場者数
4,293人
企画
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
主催
京都市立芸術大学
協力
ARTCOURT Gallery, 古美術鐘ヶ江
お問い
合わせ

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
Tel: 075-585-2010
メールでのお問い合わせは、
お問い合わせフォームからお送りください。

Artist Profiles

作家プロフィール

石塚源太(いしづか・げんた)
1982年京都府生まれ、京都府在住。美術家。漆が生み出す皮膜に、境界や身体的な意識を投影しながら作品を制作する。木の樹液である漆に然るべき形を模索し、人の振る舞いと漆のあいだで新たな場や関係を生み出そうとしている。主な発表に「工芸、ここが素敵!」(京都文化博物館/2022)、「根の力 THE POWER OF ORIGIN」(大阪日本民芸館/2021)、「ロエベファンデーションクラフトプライズ」大賞受賞(草月会館/東京/2019)、個展「多相皮膜」(アートコートギャラリー/大阪/2019)、「Hard Bodies」(ミネアポリス美術館/米国/2017)など。
隗楠(うぇい・なん)
1994年中国北京市生まれ、京都府在住。漆作家。皮革を素材とした漆芸作品を制作する。日本においては奈良時代に隆盛し、平安時代には衰微したとされる漆皮の古典技法を用いて、皮革の柔軟性や伸縮性を活かした造形美を探求する。主な発表に「Collect 2023」(Somerset House/英国)、「創工会支援企画 新進作家五人展」(京都文化博物館/2022)、個展「shall we dance・Lacquer Art by WEI Nan」(ギャラリーSOIL/香港/2022)、個展「隗楠展―漆・美のあり方」(ギャラリーマロニエ/京都/2021)など。
𡧃野湧(うの・ゆう)
1996年大阪府生まれ、京都府在住。美術作家。ワレモノとしての陶磁に着目し、あえて破損や経年変化を取り入れながら作品を制作する。文化や美術の歴史における保存の在り方を念頭に、ものの存在やものへの触れかた、その遺し方についての新しい視点を提案する。主な発表に「ARTIST'S FAIR KYOTO 2023」(京都新聞ビル)、「土を泳ぐ」(Gallery TOWED/東京/2022)、個展「われてもすえに・その後1」(LAD GALLERY/愛知/2022)、「セラミックマウンテン」(kumagusuku/京都/2022)など。
織田隼生(おだ・としき)
1991年福岡県生まれ、石川県在住。金工作家。植物の形の成り立ちや自然界の秩序を探求し、その形が持つ原理原則を抽出して数学的な法則に基づいた立体作品を制作する。彫金や鍛金の技術を用いながら、近年は暮らしに身近な素材としてのステンレスに向き合う。主な発表に「KOGEI Next 2022」(六本木ヒルズhills café/東京/古美術鐘ヶ江主催)、「工芸オブジェ NEXT GENERATION展」(日本橋三越本店/東京/2021)、個展「花のような何か」(atelier&gallery creava/石川/2020)ほか。
菊池虎十(きくち・たけと)
1998年東京都生まれ、東京都在住。アーティスト。布の可変性をテーマに、友禅染めの伝統的技法を応用して作品を制作する。染色した布を引張して図像を変形させることで、人の気配や不確かな存在といった捉えどころのないイメージを実空間に浮遊させる。主な発表に個展「Homesick Creature」(ビームスT原宿/東京/2023)、「VOLTA Basel 2022」(Elsässerstrasse 215/スイス)、「P.O.N.D」(渋谷PARCO MUSEUM TOKYO/東京/2021)、「The Great Filter」(ANAGRA TOKYO/東京/2021)など。
木田陽子(きだ・ようこ)
1996年兵庫県生まれ、滋賀県在住。美術家。陶芸の技法と素材を用いて、言葉を表現のよりしろとした制作をおこなう。キーワードを定め、その一字一字を手がかりに陶造形を生み出す。土の膜に刃を入れて、切り取り、削り、磨きながら、陶として残す形を探求する。主な発表に「Kyoto Art for Tomorrow 2023 ―京都府新鋭選抜展―」(京都文化博物館)、個展「アフタートーク」(KUNST ARZT/京都/2022)、個展「何何」(京都陶磁器会館/2021)、「アートアワードトーキョー丸の内 2020」(行幸地下ギャラリー/東京)など。
國政サトシ(くにまさ・さとし)
1986年大阪府生まれ、北海道在住。美術作家。現代の工業製品を素材に、染めや、編みといった工芸・手芸である既知の技術を使い、立体作品や建物全体の構造を利用したインスタレーションに展開する。自ら染めた結束バンドとバスケタリーの技法を使った作品を一貫して制作し続けている。主な発表に個展「ELECTRONIC FOREST WATER」(VOU/京都/2022)、「IKERU NONOICHI 2022〔表出のかたち〕」(国指定重要文化財 喜多家住宅/石川)、「工芸都市高岡2022クラフトコンペティション」優秀賞(御旅屋セリオ/富山)など。
西條茜(さいじょう・あかね)
1989年兵庫県生まれ、京都府在住。美術家、陶芸家。陶磁器の特徴ともいえる内部の空洞と表面の艶やかな質感に「身体性」を見出し、陶彫作品やそれらに息や声を吹き込むサウンドパフォーマンスを発表している。また、世界各地にある窯元などに滞在し、地元の伝説や史実に基づいた作品も制作している。主な発表に「第1回 MIMOCA EYE/ミモカアイ」大賞(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館/香川/2022)、個展「Phantom Body」(アートコートギャラリー/大阪/2022)、個展「タブーの室礼」(ワコールスタディホール/京都/2019)、「越境する工芸」(金沢21世紀美術館/石川/2019)など。
佐々木萌水(ささき・もえみ)
1991年北海道生まれ、京都府在住。漆作家。過去から未来へ向かう人の営みや時間の連続性に焦点を当て、近年は京都市内を流れる川から採集した陶磁器片を漆で繋ぎ合わせた金継ぎや呼継ぎなどの作品を制作する。主な発表に「再生工芸展」(東急プラザ渋谷/東京/2022)、個展「街なぞる川」(ギャラリー恵風/京都/2022)、「川で交わる 繋がる 繕う」(高瀬川・四季AIR/京都/2021)、はならぁと あらうんど「稜線」(曽爾村/奈良/2017)など。
佐々木怜央(ささき・れお)
1990年青森県生まれ、東京都在住。ガラス造形作家。乗り物やロボット、動植物など、作家の幼少期から目にしてきたモチーフに自身の世界観を投影しながら、物語性のある作品を展開する。2018年より主にガラスを用いた制作に取り組み、ラトビアや沖縄、台湾など、国内外でのリサーチや制作、展示を行う。主な発表に「雪の様に降り積もる/2006年の記憶から」(弘前れんが倉庫美術館/青森/2022)、「from Riga food market」(リガ・ラトビア共和国/2020)、「雪の精霊と花の唄」(やんばるアートフェスティバル2019–2020/沖縄)、個展「from my childhood」(弘前市立百石町展示館/青森/2018)など。
鈴木祥太 (すずき・しょうた)
1987年宮城県生まれ、京都府在住。金属造形作家。小さな植物が持つエネルギーや一瞬の美しさをテーマに、精緻な金工技術を用いて超写実的な草花を制作する。本展では都市鉱山から抽出した金を使用して造形した作品を展示。主な発表に「MITSUKOSHIセレクション アートの現在地」(日本橋三越本店/東京/2023)、「KOGEI Next 2022」(六本木ヒルズhills café/東京/古美術鐘ヶ江主催)、「鈴木祥太展―水のカタチ 風のカタチ―」(日本橋高島屋/東京/2022)、ヴァンクリーフ&アーペル銀座本店(東京/2021)、ほか多数。
つのだゆき
1991年神奈川県生まれ、東京都在住。硝子昆虫作家。2012年よりガラス制作に携わり、アリ、蚊、カマキリなどの昆虫や海洋生物をはじめとするモチーフを超精巧なガラス細工で表現する。本展では専門家との協働によるAR技術の演出を取り入れた《ネッタイシマカ》などを展示。主な発表に「いきもにあ」(京都みやこめっせ/2022)、親子展「夏の硝子」(武家屋敷 赤井家住宅/三重/2022)、「KOGEI Next 2022」(六本木ヒルズhills café/東京/古美術鐘ヶ江主催)など多数。
土岐謙次(とき・けんじ)
1969年京都府生まれ、宮城県在住。漆造形家。2002年頃より3Dプリンターを使った漆造形作品の制作を行う。コンピュテーショナルデザインによる乾漆造形制作の他、建築構造家と共同で乾漆の強度実験を行うなど、古くて新しい漆の可能性を追求する。主な発表に「KOGEI Next 2022」(六本木ヒルズhills café/東京/古美術鐘ヶ江主催)、「ジャポニズムの150年」(パリ装飾美術館/2018)、ほか多数。
西久松友花(にしひさまつ・ゆうか)
1992年京都府生まれ、京都府在住。陶芸家。歴史的・文化的背景を持つものや、土着文化、宗教的象徴物への関心を持ち、それらの形や装飾を土で象形し再構築する。未知や不可視なものへの恐怖から解放するための、縋り祈る対象としての作品を追求する。主な発表に「Kyoto Art for Tomorrow 2023―京都府新鋭選抜展―」 (京都文化博物館)、「美の予感2023―生彩―」(高島屋/東京、京都、名古屋、大阪)、「かめおか霧の芸術祭」(大本本部 春陽閣/京都/2022)、個展「化生」(芝田町画廊/大阪/2022)、「とどまるもの、とどまらないもの」 (真言宗御室派総本山仁和寺/京都/2022)など。
彦十蒔絵(ひこじゅうまきえ)
漆芸作家の若宮隆志が率いる漆芸の職人集団。2004年より石川県輪島市を拠点に制作。古典に現代的な感覚と概念を融合させた作品を通じ国内外で広く活動を展開する。近年の発表に「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」(岐阜県現代陶芸美術館/2023)、「これが漆!?彦十蒔絵の超絶技巧」(高台寺/京都/2022)、「天目―中国黒釉の美」(大阪市立東洋陶磁美術館特別展/2020)、ほか多数。
デヴィッド・ビランダー
1968年スイス・バーゼル生まれ、ドイツ・ミュンヘン在住。アーティスト、ジュエリーデザイナー。金細工職人として修行後、ミュンヘン美術院で学ぶ。意表を突くモチーフと素材づかいで、遊び心とひねりに溢れたジュエリー作品が注目を集め、オーストラリア国立美術館、ウィーン応用芸術科学博物館、NYミュージアムオブアートアンドデザインに収蔵される。本展では欧州で回収・リサイクルされた銀で制作したcardboard シリーズから、日本の専門家との協働によるAR技術の演出を取り入れた作品を展示する。
熊谷卓哉(くまがい・たくや)
1987年京都府生まれ、京都府在住。美術家。日々目にするモノや場、行為などを公/私それぞれの視点で収集し、「彫刻」として並べ置く。自身の作品制作や展示に加え、企画・キュレーション等を通し、「彫刻」と呼びうる条件を探りながら、公と私の併存を模索する。近年は主に3DCGや3Dプリンター等で制作された立体や映像、仮想空間といったメディアを用いて、場の分節による多層的な空間の展開、鑑賞者との関わり方、素材と構想、といった面から彫刻表現の新たな可能性を提示しようと試みている。また京都にてアーティスト・ラン・スペース「波さがしてっから」を共同運営。2018年より「RC HOTEL 京都八坂」ディレクター。2019年よりアートフェア「OBJECT」を共同運営。2020年にはショップ/クリエイティブチーム「ニハ」結成。
小松千倫(こまつ・かずみち)
1992年高知県生まれ、京都府在住。音楽家、美術家、DJ。これまでに、angoisse (バルセロナ)、BUS editions (ロンドン)、flau (東京)、Manila Institute (ニューヨーク)、psalmus diuersae (サンフランシスコ)、REST NOW! (ミラノ)等、様々なレーベルやパブリッシャーより、複数の名義で膨大な数の音源をリリース。また、情報環境下における身体と表象の関係、その記憶や伝承について光や歌といった媒体を用いて制作・研究している。

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