REPORT @KCUA

still moving final: うつしのまなざし

学長室壁画引越しプロジェクト|旧@KCUA編

藤田瑞穂(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA チーフキュレーター/プログラムディレクター)

2023年10月、京都市立芸術大学はJR京都駅東側エリアの新キャンパスへ移転しました。@KCUAでは、沓掛キャンパス学長室の壁画を新キャンパスへと「引越し」させるプロジェクトを実施しました。

沓掛キャンパス学長室の壁画(フレスコ画)は、鷲田清一前学長による学長室の大改造プロジェクトの一環として、2015年度後期に当時の本学関係者の協力のもと、美術家の川田知志によって制作されたものです。制作から7年余りの時を経たこの壁画を、フレスコ画の移設技法であるストラッポを用いて壁面から描画層のみを引き剥がし、旧@KCUA(堀川御池)に運び込んで別の支持体にうつして移動可能な状態にしたのち、新キャンパスへと運び込みました。

「沓掛編」に引き続き、「旧@KCUA編」では、旧@KCUAでの作業から新キャンパスへ「引越し」するまでのプロジェクトの様子をレポートします。

(写真撮影:来田猛/それ以外のものは画像に明記)

ストラッポ後の沓掛キャンパス学長室の壁面
ストラッポした壁画の裏側(筆者撮影)

沓掛キャンパスの学長室からストラッポで引き剥がした壁画は、いったんすべてのパーツを旧@KCUAに運び込み、さらなる移動に向けた作業を進めていきました。

まず、裏側の余分な漆喰を落としてから新しい支持体となる布の上にパーツを順に再配置し、裏打ち(裏面をよく伸ばしたのち非水溶性の接着剤を塗布して布地などに貼り付ける)が行われました。

その後、お湯を含ませた布をかぶせて膠をふやかしながら、表打ち(表面に膠を塗り、寒冷紗などの布地を貼り付ける)を剥がしていきます。

表打ちを剥がす作業の様子

2023年8月19日(土)から9月18日(月・祝)までは、「still moving final: うつしのまなざし 学長室壁画引越しプロジェクト(第1期)」として、展示公開をしながらの作業となりました。

お湯でふやかして表打ちを剥がす→乾かす、の作業を繰り返していかなければならないため、壁画を引き上げて干すための仕組みを作って、壁画を上下させる日々が続きました。

 

2023年9月25日(月)、旧@KCUAから新キャンパスまでの「引越し」の日を迎えました。壁画を楕円柱型の土台に巻き付け、4人で担げるようにセッティングをしました。また、警察署からは道路使用の許可証をいただきました。

マスコミの方々や、@KCUAのボランティアのみなさまに見守っていただきながら、いざ出発です!

約1時間半の移動の末、無事新キャンパスに「引越し」することができました!

運ばれてきた壁画は、2023年10月1日(日)の式典の際にお披露目し、2023年10月3日(火)–11月12日(日)の会期で、「still moving final: うつしのまなざし 学長室壁画引越しプロジェクト(第2期)」として、@KCUA・芸術資料館共通エントランスにて展示を行いました。

この後、さらに作業を進め、新キャンパス内での設置が行われることになります。

 

撮影・編集:片山達貴

2025年3月16日(日)更新