REPORT @KCUA

still moving final: うつしのまなざし

学長室壁画引越しプロジェクト|新キャンパス編

藤田瑞穂(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA チーフキュレーター/プログラムディレクター)

2023年10月、京都市立芸術大学はJR京都駅東側エリアの新キャンパスへ移転しました。@KCUAでは、沓掛キャンパス学長室の壁画を新キャンパスへと「引越し」させるプロジェクトを実施しました。

沓掛キャンパス学長室の壁画(フレスコ画)は、鷲田清一前学長による学長室の大改造プロジェクトの一環として、2015年度後期に当時の本学関係者の協力のもと、美術家の川田知志によって制作されたものです。制作から7年余りの時を経たこの壁画を、フレスコ画の移設技法であるストラッポを用いて壁面から描画層のみを引き剥がし、旧@KCUA(堀川御池)に運び込んで別の支持体にうつして移動可能な状態にしたのち、新キャンパスへと運び込みました。

「沓掛編」「旧@KCUA編」に引き続き、新キャンパスへ「引越し」してからのプロジェクトの様子をレポートします。

(上・右写真撮影:来田猛)

「still moving final: うつしのまなざし 学長室壁画引越しプロジェクト(第2期)」展示風景/撮影:来田猛
  • 「still moving final: うつしのまなざし 学長室壁画引越しプロジェクト(第2期)」展示風景/撮影:来田猛

「still moving final: うつしのまなざし 学長室壁画引越しプロジェクト(第2期)」(2023年10月3日(火)–11月12日(日))の後、壁画はまた移動し、2024年4月上旬までD棟1階の事務局壁面(学長室前)に展示されました。

また、漆喰と壁ごと移動させてきた窓の下の部分については、D棟1階の交流室に設置されました。こちらは、現在もこの場所に展示されています。

D棟1階での展示が終了した後、もう一度C棟に戻り、表面に残った膠などを洗浄する作業を行いました。そして、パネルに貼り、C棟の6階の廊下に設置されることになりました。

撮影・編集:筆者(最後2カットの写真撮影:来田猛)

撮影:来田猛

2024年11月8日(金)には、修復家の田口かおり氏(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)によるコンディション・チェック・レクチャーが行われました。

漆喰の上に描かれたフレスコ画は強度が高いものですが、ストラッポで剥がした描画面は非常に薄く、繊細です。今後、この作品を保存していくにあたり、定期的なコンディション・チェックを行い、修復作業の必要があるかどうかを見極めていく必要があります。

コンディション・チェックは、学芸の業務として非常に重要なものの一つでもあります。この沓掛キャンパス学長室壁画は、こうした技術を身近に学ぶことのできる作品としても機能する、大学の貴重な芸術資源となりました。

フレスコ画の描画方法だけでなく、ストラッポまでを一連の流れとして教える京都市立芸術大学の壁画教育は、国際的にもユニークなものとなっています。ストラッポを表現手法として活動する川田知志の原点は、この京都市立芸術大学の壁画教室にあると言えます。

「壁画の引越し」のレポートは本記事で一区切りですが、「学長室壁画引越しプロジェクト」では引き続き、壁画教室の教育についての調査を行っていきます。

2025年3月17日(月)更新